水冷式エンジンの中に「エア抜きバルブ」があるエンジンとないエンジンがある理由は、冷却システムのエア抜きや気泡の除去に関係しています。エア抜きバルブは、冷却システム内に溜まった空気(エア)を排出するために使われる部品です。空気が冷却系統に入ると、冷却液の循環に支障をきたしたり、エンジンの温度管理に問題が生じることがあります。そのため、エア抜きバルブが重要な役割を果たします。
水冷式エンジンでは、エンジン内部の冷却液が循環しながら熱を取り除き、ラジエーターで冷却されるという仕組みです。冷却システム内に空気が入ると、冷却液が正常に循環できなくなり、エンジンの一部が過熱する原因になります。この空気を抜くために使用されるのが「エア抜きバルブ」です。
エア抜きバルブの主な役割は以下の通りです:
冷却システム内の空気を排出:エンジンが始動したときや冷却液を補充したとき、システム内に空気が入り込むことがあります。この空気を取り除くことで、冷却システムが正常に機能し、エンジンが過熱するのを防ぎます。
効率的な冷却液の循環:冷却系統に空気が残っていると、冷却液の循環が不完全になり、エンジンの温度が適正に管理できません。エア抜きバルブを使って空気を排出することで、冷却液が効率的に循環し、エンジンの温度が一定に保たれます。
オーバーヒートの防止:エアが冷却システムに残ると、冷却効率が低下し、最終的にオーバーヒートを引き起こす可能性があります。エア抜きバルブを使うことで、これを防ぐことができます。
エア抜きバルブが設けられているエンジンは、通常、エンジンの冷却系統が密閉型であり、システム内に空気が混入しやすい環境にあります。これらのエンジンでは、冷却液の循環を最適化するために、冷却系統に空気が入らないように設計されています。
サーモスタットハウジングのエア抜きバルブ:冷却系統の一部にエア抜きバルブが組み込まれていることがあり、サーモスタットハウジングやラジエーターキャップ付近に設けられることが多いです。
冷却液の補充時やエンジン始動時にエア抜き:エンジンを始動するときや冷却液を新たに補充したときにエアが入り込むことがあります。その際にエア抜きバルブを開けることで、システム内の空気を抜き、冷却系統を適切に動作させます。
一方、エア抜きバルブがないエンジンは、エア抜きが自動的に行われる仕組みになっているか、設計上空気が入らないような冷却系統が採用されていることが多いです。エア抜きバルブがなくても、エンジン内の空気は以下の方法で排出されます:
重力式エア抜き:エンジンが動作すると、冷却液の流れやエンジンの位置によって、自然に空気が排出される設計になっています。この場合、エア抜きバルブがなくてもエアの抜ける場所が用意されています。
エア抜きが不要な設計:現代の多くの水冷式エンジンは、冷却システムが密閉型であり、空気が入り込まないように設計されています。このようなエンジンでは、エア抜きが特別に必要ないため、エア抜きバルブは不要です。
エア抜き機能を内蔵している部品:一部のエンジンでは、サーモスタットやウォーターポンプなどが空気を自動的に排出する機能を持っていることがあります。このため、エア抜きバルブがなくてもエンジン内の空気が自動的に取り除かれることがあります。
利点:
欠点:
いずれにしても、水冷式エンジンでは冷却系統内の空気を取り除くことが非常に重要です。空気が残ると、エンジン内部で熱が適切に管理されず、オーバーヒートや部品の損傷につながる可能性があります。そのため、エア抜きバルブがある場合でも、冷却液の補充やエンジン始動時に適切にエア抜き作業を行うことが大切です。